気になる症状がある
腎症状腎症状(むくみ、尿の泡立ち、
蛋白尿)から考えられる病気とは

蛋白尿)から考えられる病気とは
- 監修:西 愼一 先生
服部病院 腎臓内科部長兼透析センター長
腎臓の病気は、むくみや尿の泡立ちで気づくことがあります。尿の泡立ちが強いときは蛋白尿が出ている場合があります。蛋白尿が出ていると腎機能が低下している可能性があります。
慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病、心不全、アミロイドーシスなどが原因となる場合があります。アミロイドーシスから腎症状が出現することは他の原因疾患より頻度は少ないのですが、高齢者に多くみられます。また関節リウマチが背景にあると出現する場合があります。
アミロイドの腎臓への沈着・蓄積であらわれる症状
腎臓内の糸球体、血管、尿細管間質にアミロイドが沈着・蓄積した状態を腎アミロイドーシスといいます1)。アミロイドが糸球体に沈着することで、糸球体の構造が破壊され、蛋白尿や血尿が出現します1)。また、アミロイドが腎臓の大小さまざまな大きさの血管に沈着することで腎臓の血流が低下し、腎機能低下の原因となるほか、尿細管間質に沈着することで同部位の毛細血管を破壊し腎機能低下を引き起こすこともあります1)。
具体的な症状としては、腎機能の低下により尿の中にタンパク質が大量に排出され、尿の粘稠度(ねばりけ)が高くなることで尿が泡立つことがあります。
また、顕著な低アルブミン血症(血液中に存在するタンパク質であるアルブミンが正常よりも低くなってしまう病気)、ネフローゼ症候群(尿にタンパク質がたくさん排出されてしまうために、血液中のタンパク質が減り[低蛋白血症]、その結果、むくみ[浮腫]が起こる病気)、末期腎不全(腎臓のはたらきが正常な腎臓の15%未満に低下し、体内の老廃物や余分な水分を排泄できない状態)に進展することもあります2)。
こうした腎機能の低下により、全身のむくみや腹水、胸水、尿量の減少、血圧の異常などが生じます。
- 1)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 アミロイドーシスに関する調査研究班.腎アミロイドーシスガイドライン2020.p.4.
- 2)越智友梨,他.Heart View.2020;24:1048-53.
腎臓のはたらきの基本説明
腎臓はそら豆のような形をしており、大きさは大人では握りこぶしほどで、腰よりやや上の背中側に左右 1 個ずつあります1)。糸球体というたくさんの小さなろ過装置の集まりが血液から尿をつくっています(図1)。
図1腎臓の構造とはたらき

加藤尚志,他(監).いちばんやさしい生理学.東京;成美堂出版:2021.p110-5.を参考に作成
腎臓には、余分な水分を排泄する、老廃物を排泄する、ミネラルや pH(酸性度)のバランスを整える、ビタミンDを活性化する、血圧を調節するホルモンをつくるなどの役割があります1)。
そのため、腎臓のはたらきが悪くなると十分な量の尿がつくれなくなって体に水分がたまってしまい、浮腫(むくみ)があらわれたり、老廃物が体内にたまって体調が悪くなったりします1)。また、ビタミン D は、骨の材料であるカルシウムやリンが腸から吸収されるのを助けるはたらきがありますので1)、腎機能が低下するとビタミンDが少なくなって、骨がもろくなり骨折しやすくなるおそれがあります。
- 1)冨永直人,他(監).川崎市立多摩病院CKD教育入院ワーキンググループ(編).CKD教育入院テキスト.東京:中外医学社;2020.p.7,p.9,p.10.
むくみや尿の異常に気づくきっかけ
腎機能がかなり低下しても自覚症状があらわれることは少ないため、最初はなかなか自分では気づきません。腎機能低下の症状としてあらわれやすいのはむくみです。例えば、足が腫れて、靴下や靴がきつく感じるようになった、指がむくんで指輪が入りづらくなった、などもむくみのサインです。
また、腎臓からのサインとして、わかりやすいのは尿の色です。尿の色は、通常は黄色っぽい澄んだ色ですが、腎機能の低下により尿の色が薄くなります。また、腎機能が低下すると夜間に何回も排尿のためにトイレに行くようになります。ただ、尿の色は体調によっても変化があり、疲労があるときやビタミン剤を飲んだときなどは、一時的に濃い黄色になることもあります。
腎機能が高度に低下したときの症状
腎機能が高度に低下すると、貧血、尿毒症(体内に尿毒素がたまる状態)が進行します。そのために、疲れやすさ、体力低下、食欲低下が出現してきます。また、むくみのために体重が増加し、胸の中やおなかの中に水がたまり、息苦しさが出てくることもあります。
このような症状が出ているときは、かなり危険な状態です。
不安な方は早期受診を
どんな病気であっても、早期発見・早期治療を行うことが重要です。気になる症状がある場合には、早めに腎臓内科を専門としているクリニックや病院を受診しましょう。
腎機能が低下していると、顔や手足のむくみ、夜間にトイレへ行く回数が増える、疲れやすくなるなどの症状がみられます。こうした症状が一時的なものではなく長く続く場合には、腎機能が低下している可能性があります。
また、腎臓は機能が低下していても最初は自覚症状が出にくく、健康診断での検査などによって、はじめて腎機能の低下がわかるということも少なくありません。腎臓病は、自覚症状があらわれたときにはすでに病気が進行していることも多い病気です。尿検査と腎機能検査で早期に病気を発見し、診断・治療を行うことが重要です。健診における腎機能の指標は血清クレアチニン*1、または推算糸球体濾過量(estimated Glomerular Filtration Rate : eGFR )*2です。
気になる症状がある場合や、尿検査で異常がみられた場合には、早めにクリニックや病院を受診しましょう。
- *1
クレアチニン:筋肉に含まれているタンパク質の老廃物。腎機能の低下とともに、血清クレアチニンの値が高くなる。
- *2
推算糸球体濾過量(estimated Glomerular Filtration Rate : eGFR ):老廃物を尿へ排泄する能力が腎臓にどれくらいあるかを示すもので、この値が低いほど腎臓の機能が低下している。
腎症状をともなう主な病気と症状
- 慢性腎臓病(Chronic
Kidney Disease:CKD)
- 慢性糸球体腎炎
- ネフローゼ症候群
- 高血圧
- 糖尿病
- 心不全
- アミロイドーシス