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気になる症状がある
心症状原因不明の心症状から考えられる
病気とは

監修:猪又 孝元 先生
新潟大学大学院医歯学総合研究科循環器内科学 主任教授・診療科長

アミロイドーシスであらわれる症状

心臓の組織である間質にアミロイド線維が沈着・蓄積し、形態的・機能的な異常が起こる病気の状態を心アミロイドーシスといいます1)。心臓の筋肉にアミロイドがたまることにより、心臓が硬くなるため、一般的に、心室の壁が厚くなる心肥大や、心室の拡張期に異常が起こる拡張障害のほか、心臓筋肉の収縮力が低下する収縮障害、心臓内の刺激のつながりが悪くなる心ブロック、脈が速くなり打ち方が乱れる心房細動や心室性不整脈などを引き起こします1)

また、心臓へ血液をくみ上げるポンプの役割が弱っているために起こるむくみ、肺に水がたまることによる息切れや呼吸困難、全身に血液が回らなくなるために起こる倦怠感、手足が冷たいなどの症状がみられます。そのほか、脈が遅くなることで、失神やふらつきを起こします。

アミロイドーシスでは、自律神経障害も高い確率でみられます2)。自律神経にアミロイドが沈着すると、失神や起立性低血圧(急に立ち上がったり、起き上がったりしたときに血圧が低下し、軽い意識障害、いわゆる立ちくらみをおこすこと3))、めまいなどが起こります1)2)

出典
  • 1)日本循環器学会,他.2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン.2020.p.9,p.17-8.
  • 2)安東由喜雄(監).植田光晴,他(編).21世紀の疾患 神経関連アミロイドーシス.東京:医学と看護社;2020.p.48.

心症状の基本説明

心臓は一日中休むことなく収縮と拡張を1日に約10 万回繰り返しており、全身や肺に血液を送り出すポンプの役割をしています。心臓の構造は、右心房うしんぼう右心室うしんしつ左心房さしんぼう左心室さしんしつの4つの部屋に分かれています(図1)

図1心臓の構造

心臓の構造

木田圭亮(編).ナースが知りたい心不全のキホン.大阪;メディカ出版:2019.p.10,p.12.を参考に作成

何らかの原因で心臓の機能が低下すると、心不全や不整脈などにより、動悸、息切れ、めまい、失神、ふらつきなどの症状があらわれます。

心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。

心不全の症状としては、「心臓が静脈から血液をくみ出す機能が低下していることによる症状」と「心臓が血液を送り出す機能が低下していることによる症状」があらわれます(図2)

図2心臓のポンプとしての役割

心臓のポンプとしての役割

木田圭亮(編).ナースが知りたい心不全のキホン.大阪;メディカ出版:2019.p.12.を参考に作成

「心臓が静脈から血液をくみ出す機能が低下していることによる症状」では、息切れや呼吸困難、水分が体内にたまって下半身のむくみ(浮腫ふしゅ)や体重増加、食思不振しょくしふしん(食欲が低下すること)などがあらわれます。

「心臓が血液を送り出す機能が低下していることによる症状」では、少し動くだけでも労作時の息切れ、動悸、倦怠感・疲れやすい、手足の冷感、さらに血圧の低下、尿量の減少、意識障害(認知機能の低下) などがあらわれます。

また、心臓のリズムに異常が出るのが不整脈です。症状として、動悸、めまい、ふらつき、息切れ、息苦しさなどがあらわれ、重症になると失神を起こすこともあります。不整脈のひとつである心房細動には、心臓の病気が原因であるものとそうでないものがあり、加齢や高血圧、脂質異常症(コレステロール値などが高い病気)、高尿酸血症などの全身的な病態のほか、身体の活動を調整している自律神経の活動が関係していることもあります1)

出典
  • 1)日本循環器学会,他.2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン.2020.p.72.

心症状が起こる原因

心症状が起こる原因としては、心臓やその他の病気などさまざまなものが考えられます。

心症状の1つである心不全は病気の名前ではなく、いろいろな原因で正常な機能(血液を全身に送り出すポンプ機能)を発揮できなくなり、心臓が悪くなった状態です2)

原因としては、以下の病気が考えられます2)

  • 1.高血圧(血圧が高くなる病気)
  • 2.心筋梗塞(心臓を養っている血管の病気)
  • 3.心筋症(心臓の筋肉自体の病気)
  • 4.弁膜症(心臓の中には血液の流れを正常に保つ弁があるが、その弁が狭くなったり、きっちり閉まらなくなったりする病気)
  • 5.不整脈(脈が乱れる病気)

心不全は、これらが原因となって、動悸や息切れ、呼吸困難、むくみなど全身にさまざまな症状を起こす症候群です(図3)2)

図3心不全による症状

心不全による症状

日本心不全学会.心不全手帳(2022年12月第3版).2022./
倉敷地域心不全連携の会(監).地域の心不全手帳「説明手帳」第4版(2022年7月1日).2022./
伊藤春樹(監).イラストでわかる心臓病.東京:法研;2017.p.22-3.を参考に作成

また、先天的な心臓の病気が原因となることや、心臓の組織にアミロイドが沈着することによって生じる心アミロイドーシス3)によっても、心不全症状があらわれます。心臓の筋肉にアミロイドがたまることによって心臓が硬くなると、不整脈などを引き起こすこともあります4)

そのほか、自律神経の障害が不整脈に影響を与えることもあります1)。自律神経はあらゆる臓器を支配していて5)、不整脈のひとつである心房細動に関与したり、血圧の調整が障害されることで失神5)、起立性低血圧によるめまいなどが起こることがあります6)

自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」という逆のはたらきをする2つの種類があります。交感神経は車のアクセルのようなもので、身体を活発に動かすときに、反対に副交感神経はブレーキのようなもので、身体を休めるときにはたらきます。
何らかの原因でこのバランスが崩れると、倦怠感、不眠、疲労感がとれないなどといった全身的な症状のほか、頭痛、動機、息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみ、失神、吐き気、下痢や便秘、冷えなどさまざまな症状があらわれます。

出典
  • 1)日本循環器学会,他.2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン.2020.p.72.
  • 2)日本循環器学会,他.『心不全の定義』について(2017年10月31日発表).2017.p.1-2.
  • 3)日本循環器学会,他.心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版).2019.p.63.
  • 4)日本循環器学,他.2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン.2020.p.9.
  • 5)朝比奈正人.神経治療.2016;33:368-72.
  • 6)日本神経治療学会治療指針作成委員会(編).神経治療.2011;28:183-212.

日常生活で考えられる原因

心臓の病気以外にも、高血圧や糖尿病、脂質異常症、腎臓病、甲状腺の病気、片頭痛などが心症状の発生につながります。また、過労、塩分・水分のとりすぎ、風邪、ストレス、薬の飲み忘れなどによって心不全の症状が悪化したり、再発したりすることもあります1)

心臓が悪くならないようにするためには、心臓のはたらきを悪くさせる要因を除くことが必要です。高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満など心臓に負荷をかける可能性のある病気を未然に防ぐこと、また、そのために、禁煙、減塩、節酒、適度な運動を心がけることが重要です1)

風邪やストレスなどがきっかけで、心症状が悪化・再発することもありますので、風邪の予防や日常生活で過度なストレスをかけないようにすることも大切です。

また、日常生活で自律神経が乱れる原因としては、ストレスや不規則な生活習慣などがあります。ストレスを感じると、体内では身体を活発に動かすための交感神経が刺激されます。この状態が長く続くと、交感神経が優位な状態が続くことになり、副交感神経とのバランスが崩れ、身体の不調となってあらわれます。

ストレスには、人間関係や仕事のプレッシャー、緊張などによる精神的なものだけでなく、過労や怪我、音や光、温度といった刺激など身体的なものもあります。身体を休めるための副交感神経が優位にはたらくよう、ストレスをできるだけ避け、自分がリラックスできる環境づくりを心がけることも大切です。また、慢性的な睡眠不足や栄養バランスの偏った食生活、昼夜逆転の生活などにより生活習慣が不規則になると、このリズムが崩れ、自律神経のバランスが崩れやすくなります。

出典
  • 1)日本循環器学会,他.『心不全の定義』について(2017年10月31日発表).p.2-3.

不安な方は早期受診を

どんな病気であっても、早期発見・早期治療を行うことが重要です。気になる症状がある場合には、早めにクリニックや病院を受診しましょう。

心症状の1つである心不全では、動悸や息切れ、呼吸困難、むくみのほか、疲れやすい、手足の冷感、尿量の減少などの症状があらわれます。

特に高齢者の場合は、動悸や息切れなどの症状があっても、「年のせいだから仕方ない」「年をとって体力が落ちた」などと見過ごしてしまうことも少なくありません。こうした症状には、心臓の病気が隠れていることもありますので、気になる症状が続く場合には、早めに医師に相談しましょう。

心不全は、適切な治療によって症状が改善しても、症状がぶり返すことがあります。悪化と改善を繰り返しながら進行し、心臓がだんだん悪くなっていくこともありますので、早期に適切な診断を受け、適切な治療を続けることが大切です。

また、低血圧や片頭痛、めまい、ふらつきなどの裏に特定の病気が隠れていることもあります。気になる症状が続く場合には、早めに医師に相談しましょう。

心症状をともなう主な病気と症状

心不全
虚血性心疾患
高血圧
心臓弁膜症
心筋症
心筋炎
先天性心疾患
不整脈
アミロイドーシス