気になる症状がある
消化器症状
(便秘・下痢、吐き気)原因不明の消化器症状
(便秘・下痢、吐き気)から
考えられる病気とは

(便秘・下痢、吐き気)原因不明の消化器症状
(便秘・下痢、吐き気)から
考えられる病気とは
- 監修:加藤 修明 先生
信州大学医学部内科学第三教室 准教授
- アミロイドーシスであらわれる症状
- 消化器症状(便秘・下痢、吐き気)の
基本説明 - 消化器症状(便秘・下痢、吐き気)
が起こる原因 - 日常生活から考えられる原因
- 不安な方は早期受診を
- 消化器症状(便秘・下痢、吐き気)を
ともなう主な病気と症状
アミロイドーシスであらわれる症状
食道や胃、腸などの消化管にアミロイドが沈着・蓄積すると、消化器に不調をきたし、便秘や下痢などの症状があらわれます。
食道や胃、腸などの消化管にアミロイドが沈着・蓄積した状態を消化管アミロイドーシスといいます1)2)。消化管にアミロイドが沈着することにより、蠕動運動(筋肉の収縮によって生じたくびれが波のように徐々に伝わっていく運動)の異常や吸収の異常、粘膜の脆弱性(傷つきやすさ、もろさ)などが生じます3)。その結果、消化管の不調として下血、嘔気、食欲不振、腸閉塞(イレウス)、吸収不良症候群(食べたものに含まれる栄養素がさまざまな理由により小腸で適切に吸収されない状態)、交互に起きる便秘と下痢などの症状があらわれます。また、これらの症状が重篤である場合には栄養障害(体が必要とする栄養素を十分に摂取できない状態のことで、体重減少や全身衰弱を呈します)をきたすことがあります3)。
消化管の中では特に胃や十二指腸にアミロイドが沈着・蓄積しやすいとされています1)2)。
- 1)日本循環器学会,他.2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン.2020.p.9,p.18,p.42.
- 2)安東由喜雄(監).植田光晴(編).最新アミロイドーシスのすべて―診療ガイドライン2017とQ&A.東京:医歯薬出版;2017.
- 3)越智友梨,他.Heart View.2020;24:1048-53.
消化器症状(便秘・下痢、吐き気)の基本説明
消化器とは基本的に食べ物の通り道で、口から肛門まで続く器官です。摂取した食べ物を栄養素に分解(消化)したり、栄養素を血液中に吸収させたり、消化しにくいものを体外へ排出したりする役割を担っています。
消化器は、消化管(食道、胃、十二指腸、小腸、大腸)をはじめとして、肝臓、胆のう、すい臓などの臓器から成り立っています。
このため、消化器に障害が起こると、胃の痛み、胸の痛み、胸やけ、呑酸、胃液の逆流、げっぷ、のどのつかえ、のどの違和感、胃のもたれ、膨満感、食欲不振、吐き気、おう吐、腹痛、便秘、下痢、下血など、さまざまな症状があらわれます。
消化器症状(便秘・下痢、吐き気)が起こる原因
不快な消化器症状をもたらす原因として考えられるのは、消化器疾患です。消化器はたくさんの臓器から成り立っているため、その病気の数も多く、あらわれる症状もさまざまです。
消化器疾患は大きく分けると、消化管疾患と、肝臓・胆のう・すい臓疾患に分けられます。
食道の疾患としては、食道炎、胃食道逆流症、食道がんなど、胃・十二指腸の疾患としては、急性胃炎、慢性胃炎、消化性潰瘍、胃がんなど、腸の疾患としては、感染性腸炎、虚血性腸炎、炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome :IBS)、大腸がんなどがあります。また、肝臓では、肝不全・肝硬変、ウイルス性肝炎、肝がんなど、胆のうでは、胆のう・胆管結石症、胆のう・胆管がんなど、すい臓では、急性膵炎、慢性すい炎、すいがんなど、実に多くの病気があります。
消化器症状には、胃の痛み、胸の痛み、胸やけ、呑酸、胃液の逆流、げっぷ、のどのつかえ、のどの違和感、胃のもたれ、膨満感、食欲不振、吐き気、おう吐、腹痛、便秘、下痢、下血などさまざまなものがあります。これらの症状の1つだけが起こることもあれば、複数が同時に起こることもあり、消化器官のどの部分に障害が生じているかによっても、症状の出方は異なります。また、消化器以外の病気により、消化器症状があらわれることもあります。
消化器症状は、胃や腸、食道など臓器の障害による消化器疾患が原因で起こる場合のほか、慢性的な症状があるにもかかわらず、検査などでは異常が認められない「機能性消化管障害」(Functional Gastrointestinal Disorders : FGIDs)の場合もあります1)。
FGIDsが起こる原因としては、消化管に対する酸や食物などの刺激や消化管の運動異常、心理的・社会的ストレス、炎症と免疫など複数の要因が関係していると考えられていますが、まだ原因が解明されているわけではありません。ストレスの負荷状況によっても症状の出方が変わるため、対応が難しい場合もあります。
- 1)Drossman DA.Gastroenterology.2016;150:1262-79.
日常生活から考えられる原因
消化器疾患の影響以外に、ストレスや食生活の乱れから消化器症状が起きる場合もあります。
日常生活のなかで、身体的または心理的ストレスがかかると、自律神経の機能が乱れ、腸の神経が知覚過敏となるために腹痛や便秘などが起きることがあります。このような場合には、身体的・心理的に過度なストレスがかからないよう、日常生活上の習慣の見直しやストレスを減らす工夫をすることが重要です。
また、胃腸に負担のかかる食生活により消化器症状があらわれる場合も多くみられます。刺激物の過剰摂取、飲みすぎ・食べすぎなどにより胃腸に無理な活動をさせることが、消化器の不調につながることもあります。日頃から、胃腸に負担をかけないよう食生活を改善することが大切です。便秘から腹痛が起きる場合もあるため、普段から適度な運動や食物繊維の適切な摂取を心がけることも重要です。
不安な方は早期受診を
どんな病気であっても早期発見・早期治療を行うことが重要です。気になる症状がある場合には消化器内科を専門としているクリニックや病院を受診しましょう。
消化器内科では、どのような症状が出ているのか、医師が詳しく聞き取りを行います。また、消化器症状が出ている場合には普段の食事や生活習慣などが影響している場合もありますので、思い当たることがあれば医師に話してみるとよいでしょう。
症状によっては血液検査、レントゲン、超音波、内視鏡などの検査が行われます。検査日を短縮したり、身体への負担を軽減したりする検査方法もありますので、検査で不安に思うことがあれば医師に相談しましょう。
消化器症状(便秘・下痢、吐き気)をともなう主な
病気と症状
病気と症状
- 大腸がん
- 急性胃炎
- 急性胃腸炎
- 虚血性腸炎
- 過敏性腸症候群(Irritable
Bowel Syndrome:IBS)
- 炎症性腸疾患
(Inflammatory Bowel
Disease:IBD)
- 胃潰瘍
- アミロイドーシス